fab casketの中の人です。なんだか最近初めて来てくださる方が増えていてすごくうれしい。せっかくなのでご説明を……。このブログは、普通の熱積層型3Dプリンタで本物の金属の質感や重さを持ったプリントができるようになってきているけれど、まだ去年の第四四半期の話なので周知されていない現状があり、せっかくの素材なのにもったいないということで始まりました。前回まで本物の青銅の胸像を打ち出してみるシリーズをやっていました。
でもでも、胸像ってそこまでの需要はないんですよね。確かにとてもきれいだし、3Dスキャンした社長さんやお父さんの銅像を作ってプレゼント!なんてこともできますけれど、個人ではそうそう機会がありません。うち(i-casket)ではお仕事で3D銅像制作をやっているので前シリーズのようなネタはとてもありがたかったりします(自画自賛)。もしミニ銅像にご興味があればi-casketまでご連絡を!
話を戻します。BronzeFillやBrassFill、CopperFillのような、いわゆる金属フィラメントを自分の3Dプリンタで打ち出すとき、それが金属だからこそ素敵で、かつ実用もできて、プレゼントもできる、そんな魅力的なコンテンツは何だろうと考えて、行き着いたのがチェスセットでした。
3Dプリンタで打ち出すためのチェスの駒などは3Dデータ共有サイトにもたくさんシェアされているのですが、素材が樹脂だとどうしてもチープな印象がぬぐえません。オリジナルの魅力的な駒だからバランスが取れるけれど、それでも「樹脂でプリントしたもので、物珍しい」という以上の魅力はありません。もちろん樹脂の美しさはあるのですが、個人的にどうもチェスの駒とは相容れない気がしています。
しかし、もし駒が金属製ならどうでしょう?
木製の駒や大理石製の駒、陶器などと並び、ブロンズや銅、真鍮などの金属もまた高級な駒の素材として一般的です。そこで今回からは金属3Dプリントならではの魅力的なコンテンツとして、金属製のチェスセットを制作していきます。どうせならかなり良いものにしたいので、バウハウスのチェスセットに挑戦してみます。具体的には、Bauhaus model II 1924というかなりモダンなデザインのチェスセットで、買うとこのくらいします(ノ∀`)。
でもって、さらにせっかくなので、できたチェスセットを金属プリントのサンプルとしてfab casketで頒布したいと思います。3Dプリンタは持っていないけれどチェスセットには興味があるという方も大歓迎ですし、金属プリントの実物を見てからフィラメントを購入したいと思っている方にも是非お手にとっていただければと思います。
……大風呂敷を広げてしまったぁ……
というわけで、早速打ち出し開始です。3Dプリントの魅力的なところは、フィラメントとデータさえあれば、すぐにでも「実物」が手に取れること。でも、そのためには精度に優れたプリンタが重要です。ちなみにfab casketではgenkei社のatomを使用していて、さらに現在安くて怪しいけれど使えればまともらしいという噂の中華kosselの導入テスト中。このあたりのお話も追々書いていきますね。ともあれ、うちのatomは数年前に自分で組み立てて導入した「初代」だったのですが、いろいろな調整や改修を経て、ほぼ現在の最新バージョンと同様の一台になっています。特に初代と比べるとY軸周りの精度が段違いに出しやすいのでおすすめです。このあたりもまた追々……。
ちなみにこれが現在の外観。ホットエンドにPLAプリントを冷やすためのファンがついたり、Z軸の自動調整がついたり、いろいろな配線がスパイラルチューブに格納されたりと色々ありましたが、できるだけ軽いX軸のために今はそれらは全部外されて、他の配線は無理矢理まとめてあります。
また話がそれた。えーと、とりあえず、データを用意します。
打ち出しについては別のシリーズで詳しくやる予定ですが、とりあえず、3Dデータを用意したら、それをスライサと呼ばれるソフトにかけて0.05~0.3mmくらいの薄切りにします。そして、それを元にプリンタの制御コードを出力してから、制御ソフトにそのコードを読み込ませれば、あとはできあがりを待つだけです。今度動画でも貼りますね。
金属フィラメントも使い方は普通の樹脂フィラメントと同じなので、打ち出し中の様子も特に変わりません。Amphora 3DもPLAみたいな、ちょっといやらしい甘さのキャラメルポップコーンのような香りがします。調子に乗ってかいでいたらのどが痛くなりました。世間では良い香りと言われることもあるんですが、どうしても信じられません。
打ち出し中。
3Dプリントでは、一般的に中身は中空にしてフィラメントを節約し、無駄な重量を減らします。今回の作品も、銅像を鋳造するときのように中身は入りません。ただ、写真で示したように、上に構造が乗るように八角形などの構造物が作成されます。これで中空が20%程度埋まります。
だいぶ積まれてきたところ。ポーンは上部を乗せるために、さらに細かいメッシュが乗り始めているのがおわかりになるでしょうか。この後ここに面を作って完成します。
ほぼ青銅でできているといっても、中はこんな構造になっているんです。これはロストワックスなどでは作れません。青銅などで作りつつも、必要以上には重くしない。これもチェスセットにはメリットが大きいと思います。
打ち出し終了です。ルークは構造上サポート材がついているのでかじりとっておきます。
まだ粘土みたいですけれど、持った感じと重さはやはり金属。できあがりが楽しみです。それではまた次回!
なお、今回使ったフィラメントが欲しい方は是非こちらへ!
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