……あ、はじめまして。fab casketの中の人です。

私、普段はi-casketというまじめなNPO支援組織のひみつ研究施設の、一番北側の寒くて乾ききったところでほぼ引きこもりながらなんやかんやプログラムとか3Dとか構築とかなんでもやってます。たまーに太陽の下に出るときには、子供たちの夏休みの宿題のためにかけずり回ったり。そんな流れで数年前に3Dプリンタを導入して、PLA樹脂と戯れていたんです。

そのうちにABSに手が出て、3Dプリンタ以外のCNCマシンにも食指が伸び、いろいろやっているうちに、気がつけば世間では結構3Dプリンタが普及し始めている!

でも、新しいものが普及するときには新しい「むずかしいこと」も出てくるもので、たとえば3Dプリンタの場合は、勢いで導入したとしても、まずデータを作るための垣根が高かったわけです。何が作りたいのかということよりもまず、新しいものに手を出したいという人の場合、普通のプリンタと違って打ち出すデータ作りでまず躓いてしまう。

そんななかでthingiverseのようなユーザコミュニティサイトが登場して、作成したデータを持ち寄ることで打ち出すデータには事欠かなくなりました。もちろん相変わらず自分のオリジナルデータを作ろうとするとハードルはいっぱいあるのですが、とりあえずは何とかなります。

ひとつのむずかしいことが出てくると、それを乗り越える新しい方法が出てくる。今これの繰り返しでものすごい勢いで進化している、それがFDM(熱積層型)3Dプリンタの今です。そして、去年の後半くらいから、またあたらしい革命が始まっています。それは、フィラメントの素材革命です。

もっとも、いままででもたくさんの素材が打ち出せてはいました。メジャーなPLAやABSはいうまでもないのですが、他にもナイロン樹脂ですとか、変わったところではチョコレートですとか、創意工夫によって多くの「溶けて固まる」素材が使われてはいたわけです。

しかし、PLAとABS以外は、多くの場合3Dプリンタに何らかの改造を加えなければなりませんでした。たとえばナイロンは一般の3Dプリンタでは溶融温度が高すぎて溶かせません。そこで、より高い温度の出せるホットエンドと交換し、同時に3Dプリンタ本体がその熱で溶けてしまわないための熱対策を行わなければなりませんし、チョコレートを打ち出すにも、標準的な方法なんてそもそもありません。thingiverseにはチョコレート用のエクストルーダなどもアップロードされていますが、それらは結局、3Dプリンタそのままで使えると言うにはほど遠く、新たなマシンシステムを1つ組み上げなければなりません。

結局、黎明期から3Dプリンタに関わってきたような、機構の開発や未知のインシデントをハックすることに喜びを見出す層ならいざしらず、普及期に大勢参加してくる「3Dプリンタという新しいマシンを使って、いちユーザとして物作りを純粋に行いたい」層にとっては到底手の出ない領域になっているのが現状です。

このあたりはまたいつか掘り下げたいところですが、今3Dプリンタの普及を目指している側と、3Dプリンタをただ道具として使いたい側に超えがたい断絶があるように思えてなりません。とりあえず話を戻します。

ともあれ、要するに大半のユーザにとっては、事実上PLA樹脂だけが、またちょっと上のクラスのプリンタを持っているユーザにとってはそれにプラスしてABS樹脂の2種類だけが、物作りで扱える唯一の(あるいはたった二つの)素材だということです。

一方、あらゆる工夫で素材を増やしてきたベテランでも、どうしても越えられない壁がありました。

金属や木などの非プラスチック素材です。

たとえば金属で整形できる3Dプリンタはあります。レーザー焼結という仕組みで、金属の粉を瞬時に溶かして積層していくのですが、当然大規模なマシンですし、自宅の部屋に置いて楽しく物作りという世界からはほど遠い存在です。

でも、PLAやABSだけでは作れるものには限界があります。たとえばアクセサリ方面ではキュートなプラスチックアクセサリを作るのが精一杯。もちろん銀粘土の型などに利用すればその限りではないけれど、3Dプリンタが直接銀を打ち出せるわけではありません(そのうち銀粘土を打ち出せるようになっても驚きませんが)。

要するに、別に機構はどうでも良くて単に3Dプリンタを普通に使いたいだけの層にとって、プラで作れる以外の選択肢がないのは困る、ということです。

ところが、そんな「むずかしいこと」が、去年の後半あたりから意外にも一気に解決しつつあります。それが、フィラメント革命です。

具体的には、青銅、銅、真鍮、カーボンファイバー、木、竹、磁鉄鉱、ステンレスなどの素材を特殊な樹脂と混合してフィラメントにすることで、ほとんどの場合3Dプリンタは無改造のまま(ここが重要)、なんと本物の金属や木などの質感を持った作品が打ち出せるようになってしまったんです。

これなら作品に専念したいユーザにとっても、自分の3Dプリンタそのままで、しかもアクセサリやアートに応用が利くので、メリットはすさまじく大きいのです。

そんな特殊なフィラメントなのですが、残念なことに国内ではほとんど手に入れられません。海外から直接輸入するか、一部のショップさんに青銅など一部の特殊フィラメントが少量在庫しているのを探し当てるかという状況。

もちろん、黎明期からのベテランなら、そもそも自分の3Dプリンタの部品自体海外のオークションサイトなどで落札し、やりとりは当然英語で行って、場合によっては税関との交渉などもしなければならなかったこともあり、「そんな程度」のことは慣れきっているから、当然適当に海外からささっと輸入すれば事足ります。

しかし、それは(ここが先ほど指摘した断絶の一つなのですが)「普通のユーザ」にとっては当たり前どころの話ではありません。作品作りに専念したいときに、そんなことに大きなリソースを割くのは、特にそれが楽しいというわけでもない人々には、時間の無駄・苦痛以外の何ものでもありません。

そこで、物作りを支援するfab casketとしては、まずこうした特殊なフィラメントを、日本語だけで国内から「普通に買える」サイトで始めたいと思った次第です。

もしご興味があれば、ショップはhttp://fab.buyshop.jp/です。お気軽にお越しになってみてください。

 

……っと、砕けて気軽に書くつもりが、ついまじめに……。ともあれいろいろ書いて行ければと思っています。本体のi-casketの中の人とかも何か書きに来るかもです。

お楽しみに~

 

 

 

 

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